てんかんとは
てんかんは、脳の神経細胞(ニューロン)の異常な電気活動によって引き起こされる、発作を繰り返す慢性疾患です。
脳の神経細胞は通常、電気信号を使って互いにコミュニケーションをとっていますが、てんかん患者では、一部の神経細胞が異常な電気信号を発し、それが脳全体に広がることで発作が起こります。
てんかんは、年齢、性別、人種を問わず発症し、世界中に約5000万人の患者がいると推定されています。日本でも約100万人がてんかんと診断されています。
てんかんの症状
てんかんの代表的な症状は、脳の異常な電気活動によって引き起こされる「発作」です。発作の種類は様々で、症状も多岐にわたります。
典型的な症状としては、体のけいれん、意識障害、感覚異常などがあげられます。しかし、症状は発作の種類によって異なり、中にはほんの一瞬の意識消失や、体の一部がピクピク動くなど、一見てんかんとは気づきにくい症状もあります。
発作は数秒から数分程度で自然に治まることがほとんどですが、中には長時間続く発作もあります。また、発作の前後に、頭痛、吐き気、めまいなどの前兆症状や、発作後の混乱状態が現れることもあります。
てんかんの原因
てんかんは、脳の神経細胞(ニューロン)の異常な電気活動によって引き起こされますが、その背景には様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
先天性の脳の形態異常、脳梗塞や頭部の外傷、感染症などが原因となることがありますが、てんかん患者さんの約7割は原因を特定することができません。
このような場合、「特発性てんかん」と呼ばれます。特発性てんかんは、遺伝的な要因が関与していると考えられています。
てんかんの診断
てんかんの診断は、以下の検査を組み合わせて行われます。
- 問診
医師は、患者さんに発作の症状や経過について詳しく聞きます。いつから発作が起こっているのか、どのような症状が現れるのか、発作の頻度や持続時間など、詳細な情報を聞き取ります。 - 脳波検査
頭皮に電極を装着し、脳の電気活動を記録します。てんかん患者では、異常な脳波のパターンが見られることが多いため、診断に役立ちます。 - 画像診断
MRIやCTスキャンなどの画像診断は、脳の構造異常や腫瘍などを調べるために用いられます。てんかんの原因が特定できない場合や、手術療法を検討する場合に行われます。
このほかにも、血液検査や尿検査、長時間ビデオ脳波モニタリング検査などを行う場合もあります。
てんかんの治療
てんかんの治療法としては、薬物療法が最も一般的です。抗てんかん薬と呼ばれる薬を服用することで、脳の神経細胞の異常な活動を抑制し、発作を予防することができます。
現在、約20種類の抗てんかん薬が日本で承認されています。薬の種類によって、効果や副作用、服用方法などが異なるため、医師と相談しながら自分に合った薬を選ぶことが重要です。
薬物療法で発作がコントロールできない場合は、手術療法を検討する場合もあります。手術療法には、病巣切除術や脳梁離断術などの種類があります。
てんかんの予防
てんかんは、完全に予防することは難しい病気です。しかし、以下の対策をすることで、発作のリスクを減らすことができます。
- 原因となる疾患や状態の予防
てんかんは、脳梗塞、脳出血、頭部外傷、脳炎などの脳の病気や、遺伝的要因などが原因で起こることがあります。これらの病気や状態の予防は、てんかんの発症リスクを減らすことにつながります。 - 薬物療法の継続
薬物療法で発作がコントロールできている場合は、医師の指示に従って薬を継続することが重要です。薬を勝手に中止したり、服薬回数を減らしたりすると、発作が再発する可能性があります。 - 生活習慣の改善
規則正しい生活習慣を心がけ、十分な睡眠をとることも、発作の予防につながります。また、過度な飲酒やストレスは発作を誘発する可能性があるため、控えましょう。
てんかんの注意点
てんかんは、適切な治療を継続しなければ、発作の頻度や強度が増してしまう可能性があります。また、薬物療法による副作用も起こる場合があり、定期的に医師と相談しながら、適切な治療を受けることが重要です。
発作が起こった際には、家族や周囲の人が安全を確保することも大切です。患者さんを安全な場所に移動させ、けがをしないように周囲の物を取り除きます。また、発作の様子を観察し、発作が始まった時間や止まった時間を記録しておきます。
発作が止まった後は、患者さんをゆっくりと休ませます。意識が戻っていない場合は、無理に起こそうとしてはいけません。また、発作の様子を医師に報告し、必要に応じて治療法の調整を行います。
まとめ
てんかんは、脳の異常な電気活動によって引き起こされる脳の病気です。発作は突然起こり、意識を失ったり、体のけいれんを起こしたり、不自然な動作をとったりするなど、様々な症状が現れます。
てんかんは完治する病気ではありませんが、適切な治療と管理によって、多くの人が日常生活を送ることができています。治療を継続することで、発作を抑制し、症状を改善することができます。
てんかんは、発作による身体的な危険性や、周囲からの理解不足による社会的な制限など、様々な課題が存在します。てんかんについて理解を深め、患者さんが安心して生活できる環境を整備していくことが重要です。
Q&A
Q.てんかんとは何ですか?
てんかんは、脳の異常な電気活動によって引き起こされる発作を繰り返す病気です。
Q.原因は何ですか?
てんかんの原因は様々ですが、遺伝的な要因や脳の損傷、感染症、脳腫瘍などが挙げられます。原因が特定できない「特発性てんかん」も多く存在します。
Q.症状は何ですか?
典型的な症状としては、体のけいれん、意識障害、感覚異常などがあげられます。中にはほんの一瞬の意識消失や、体の一部がピクピク動くなど、一見てんかんとは気づきにくい症状もあります。
Q.治療法は何ですか?
治療法には、薬物療法や手術療法などがあります。近年では、食事療法や迷走神経刺激療法などの新しい治療法も開発されています。
Q.発作が起こったらどうすればいいですか?
発作が起こった場合は、周囲の人が安全を確保し、医療機関に連絡することが重要です。また、発作が終わった後は、安静にして医師の指示に従う必要があります。
Q.てんかん患者は社会生活を送ることができますか?
てんかんの程度や症状によって異なりますが、ほとんどのてんかん患者さんは社会生活を送ることができます。ただし、運転免許の取得など一部の制限がある場合があります。
Q.てんかんによって発生する発作は予防できますか?
てんかんによって発生する発作を完全に予防することはできませんが、薬物療法や食事療法などで発作の発生頻度を減らすことができます。
Q.薬物療法にはどのような種類がありますか?
抗てんかん薬を服用するのが一般的です。薬剤の種類や量は、症状や病状によって異なります。補助療法として、ベンゾジアゼピン系薬剤やステロイドを使用することもあります。
Q.てんかん患者はどのような食事が適していますか?
てんかん患者も、健康な人と同じように、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランス良く摂取する必要があります。
なお、一部の難治性てんかん患者さんには、ケトン食療法が有効な場合があります。ケトン食療法は、糖質の摂取を制限し、脂質の摂取を増やすことで、体内にケトン体という物質を生成し、発作を抑制する治療法です。ケトン食療法は医師や栄養士の指導のもとで行う必要があります。
Q.てんかんの症状を誤解されることがあるのでしょうか?
てんかんの症状は周囲から誤解されることがあり、偏見や差別、孤立、治療への影響などの問題を引き起こす可能性があります。
具体的には、意識を失う発作は「ぼーっとしている」「寝ている」と誤解され、全身けいれんは「暴れている」「奇声を発している」と誤解されることがあります。周囲の人々もてんかんに対する理解を深め、偏見や差別をなくしていくことが大切です。
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