表皮水疱症

表皮水疱症

皮膚を軽くこすったりしただけで、水膨れや皮膚潰瘍を生じてしまうのが「表皮水疱症」で遺伝性疾患とされています。
体の表面を守っている皮膚には、いつも外部から様々な刺激や圧力が与えられます。こうした刺激や力によって皮膚の組織が損傷を受けると、体内に損傷が進行します。それを防止するために、皮膚は外側の表皮と内側の真皮の2層構造で作られており、表皮細胞同士、あるいは表皮と真皮が、「接着構造分子」と呼ばれるタンパク質でくっついています。ゼラチン状の組織である真皮に表皮がしっかりと固定されるため、表皮の最下層に存在する「表皮基底細胞」が、その下の「基底膜」というシートに接着構造分子で固定され、さらには基底膜が真皮に接着構造分子で固定されることで、すぐには剥がれない丈夫で強い皮膚が出来上がっています。表皮水疱症では、表皮~基底膜~真皮の接着を担っている接着構造分子が生まれつき少なかったり、もしくは消失しています。

表皮水疱症の症状

単純型表皮水疱症

軽症の場合には手のひらや足裏だけに小さな水膨れができます。重症で全身に広がると,胴回り,腕,および頸部に水膨れができるほか,口の中の粘膜にも症状がある場合があります。水膨れは表皮の表層部にできるため,普通は痕に残ることなく治ります。時間の経過とともに,手のひらや足裏に皮膚の表面にある角質が異常に増殖し、蓄積されて、厚みを増した状態である過角化が生じ,限局性のたこや,重症例ではびまん性の肥厚として現れます。

接合部型表皮水疱症

軽症の場合には肘や手,膝および足だけに出てきて,乳児期を過ぎると治っていくことが多いです。エナメル質形成不全や爪の形成異常,また脱毛症を生じることがあります。これは痕に残ることなく治ることが多いです。全身性に広がった重症な皮膚・粘膜の水疱形成では,広範囲の皮膚だけでなく,結膜,口,消化管,気道,および泌尿生殖器にも症状が現れることがあります。口の周りや顔に現れる特徴的な赤く湿潤したようになるのがこの病気の特徴的な所見です。重症になってしまうと,より深くの接合部や真皮のレベルで起きるために,痕に残ってしまいます。管腔病変の瘢痕形成により,症候性の狭窄が起きる場合もあります。

栄養障害型表皮水疱症

軽症から中等症の場合は,主に肘や手,膝および足にのみに発生します。しばしば爪の形成に異常が発生しますが,軽症例ではこれだけが唯一の症状となることもあります。重症になると,出生時にはびまん性の皮膚・粘膜の水疱形成を呈しています。皮膚表面全体だけではなく口腔内や消化管の粘膜にも症状が及んでいる場合があります。出生時に広範囲の皮膚が脱落してしまうことも珍しくはありません。瘢痕形成によって体の表面だけでなく体内にもいろいろな合併症が起きます。偽合指症はほぼ確実と言っていいほど起きる症状です。軽度の水疱は,重度でない瘢痕と稗粒腫を伴って治癒します。重度の水疱は,より深部のレベルに生じるため,瘢痕を伴って治癒します。

キンドラー症候群

水疱は特に手足の背側にできます。発症を繰り返すことで,しわの寄った薄い皮膚(皮膚萎縮)となり,病変が広がっていく可能性があります。キンドラー症候群は,軽症の場合もありますが光線過敏症があることで表皮水疱症の他の3大病型と鑑別されます。皮膚萎縮や色素変化などの多形皮膚萎縮がよく起きます。皮膚・粘膜の瘢痕形成により,食道および泌尿生殖器の狭窄,眼瞼外反,ならびに偽合指症が生じます。重度のキンドラー症候群の水疱は,より深部のレベルに生じるため,瘢痕を伴って治癒します。

表皮水疱症の治療

根本的治療法は見つかっておらず、症状に合わせた対症療法が基本となります。

局所療法

水疱やびらんなどは、1日1回程度流水で洗浄するのが基本で、そのあとにワセリンなどの軟膏を塗ります。水疱は、消毒された注射針で穴をあけて内容液を排出します。水疱のふたは傷を守る働きがあるので取り除かずに、軟膏などを塗ったガーゼで覆ったあと、軽く圧迫して固定します。指同士が癒着しそうな場合は、指の間にワセリンガーゼを挟むなどして癒着を防ぎます。潰瘍面は、軟膏や非固着性シリコンガーゼで保湿を高め、もし感染が起きたときは抗菌薬の軟膏と飲み薬で治療します。抗菌薬の軟膏は、長い期間使用すると耐性菌が出てくる要因にもなるので、状況を見極めながら使用する必要があります。びらんや潰瘍が悪化した場合には、感染源の特定や、皮膚がんの有無、などを調べるために、菌の培養検査や皮膚生検が行われる場合もあります。

全身療法

劣性栄養障害型表皮水疱症になると口腔内の粘膜や食道に病変が生じ、栄養を摂取することが困難となり、慢性的な栄養不良や貧血になっていることがほとんどです。そのような場合には、栄養剤を摂取するか経口摂取が難しい場合は、経鼻チューブや点滴を利用して、栄養補給させる場合があります。また、皮膚のかゆみが激しい場合には、抗ヒスタミン薬を服用する場合もあります。

合併症に対する治療

劣性栄養障害型と接合部型では、指の癒着や皮膚の悪性腫瘍、食道狭窄、幽門狭窄、肛門部のびらん・狭窄、栄養不良、結膜びらん、貧血など問題が多岐にわたります。さまざまな合併症に対しては、皮膚科、内科、外科、小児科、眼科、歯科等、各分野の専門医が協力しながら行われるチーム治療が重要となってきます。

 

表皮水疱症のよくある質問

Q.遺伝しますか?感染しますか?

A.表皮水疱症は、表皮と真皮を接着させるタンパクを作る際の設計図にあたる遺伝子に異常があり生じる遺伝性の皮膚疾患です。そのため、接触や空気による感染は起こりませんが、遺伝することがあります。
遺伝子は父親と母親から子供に伝わります。そのため、どの遺伝子も必ず父親由来と母親由来の二対の遺伝子が存在することになります。そのうちどちらか一方(父親由来あるいは母親由来)の遺伝子異常だけで病気になる遺伝様式を優性遺伝、父親由来と母親由来の遺伝子の両方に異常があって病気になる遺伝様式を劣性遺伝といいます。表皮水疱症は病型によってこれらの遺伝様式が決まっているため、正しい病型診断を行うことによって患児の両親が次のお子さんを希望される場合、次のお子さんが表皮水疱症を発症する確率が推測されます。また患者さんがお子さんを希望される場合も同様です。

Q.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

A.世界的に10~20万人の人口にひとりの割合で患者さんがおられます。人口が約1億人の日本国内には、約500~1000人の患者さんがおられると予想されます。

Q.この病気はどのような人におおいのですか?

A.特定の人や地域に偏って生じる病気ではありません。

Q.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

A.皮膚や粘膜が擦れることにより水疱や潰瘍が生じますので、皮膚や粘膜の保護が重要です。肘、膝、手、足、肩、臀部など、擦れて摩擦が生じやすい部位は、可能な限りガーゼや包帯で保護することで、水疱形成を予防します。水疱ができた場合は早めの処置(水疱内容液の除去)が潰瘍形成や潰瘍拡大を予防します。また、栄養管理が重要で、潰瘍面から水分やタンパク質などが漏出して栄養状態が悪化し、また慢性の炎症により鉄欠乏性貧血を合併する場合がありますので、医師と良く相談して栄養状態を定期的にチェックし、必要に応じて経口栄養剤を食事に追加すると共に、十分な水分摂取を心がけると良いでしょう。

 

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