天疱瘡

天疱瘡

天疱瘡は、皮膚・粘膜に病変が認められる自己免疫性水疱性疾患であり、病理組織学的に表皮細胞間の接着が障害される結果生じる棘融解(acantholysis)による表皮内水疱形成を認め、免疫病理学的に表皮細胞膜表面に対する自己抗体が皮膚組織に沈着する、あるいは循環血中に認められることを特徴とする疾患と定義されています。天疱瘡抗原蛋白は、表皮細胞間接着に重要な役割をしているカドヘリン型細胞間接着因子、デスモグレインです。
天疱瘡は、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、その他の3型に大別されます。その他として、腫瘍随伴性天疱瘡、尋常性天疱瘡の亜型である増殖性天疱瘡、落葉状天疱瘡の亜型である紅斑性天疱瘡、疱疹状天疱瘡、薬剤誘発性天疱瘡などが知られています。

天疱瘡の原因

自分の表皮の成分(デスモグレインという細胞間接着因子)を攻撃する抗体(自己抗体)が病気を起こすことが分かっています。このような抗体が作られる詳しい原因はまだよくわかっていませんが、本来の体質(内因)に、生活習慣や環境(外因)の影響が加わって生じると考えられています。

尋常性天疱瘡 (PV)

天疱瘡の中で最も頻度が高い疾患で,特徴的な臨床的所見は口腔内に生じる有痛性のびらんです。粘膜優位型では,主に粘膜に症状が現れますが,尋常性天疱瘡の患者の半数以上を占める粘膜皮膚型では,口腔のみならず頭部,腋窩,鼠径部,上背部,臀部などの皮膚にも弛緩性の大・小水疱が多発し,破れて疼痛の強いびらんが形成されます。また,びらんは,しばしば隣接したびらんと融合し拡大します。また,増殖性天疱瘡と呼ばれる尋常性天疱瘡の亜型では,水疱が破れた後,びらん面が乳頭状に増殖してイボのように厚くなり,強い悪臭を放つという特徴があります。

落葉状天疱瘡 (PF)

弛緩性水疱が破れ,これが乾燥して落葉状の鱗屑を生じることから命名されました。頭部,顔面,胸,背などの脂漏部位に好発し,口腔などの粘膜には病変は認められません。予後は概して尋常性天疱瘡より良好です。また,落葉状天疱瘡の亜型として,顔面に蝶形紅斑様の皮疹をきたす紅斑性天疱瘡 や,ブラジルを中心とした南米地域の風土病として知られているブラジル天疱瘡 があります。

腫瘍随伴性天疱瘡 (PNP)

腫瘍随伴性天疱瘡は,口腔内から咽頭,赤色口唇にかけてびらん,潰瘍,血痂を認めます。また,多くの患者で眼粘膜病変を伴い,偽膜性結膜炎,重症例では眼瞼癒着に至る場合もあります.随伴する腫瘍の大半はリンパ球系の増殖性疾患です 。
その他の天疱瘡群
天疱瘡群に属するその他の疾患には,臨床的所見が類天疱瘡群のジューリング疱疹状皮膚炎と類似して,掻痒性紅斑と環状小水疱を特徴とする疱疹状天疱瘡 の他,D-ペニシラミンやカプトプリルといった薬剤が原因とされる薬剤誘発性天疱瘡,新生児天疱瘡,一般的な天疱瘡群の疾患ではIgGが沈着するのに対し,IgAの沈着を示す表皮細胞間IgA皮膚症などが含まれます。

天疱瘡の治療

早期診断と、初期治療が重要である。初期治療が不十分であるとステロイド減量中に再発を認めることがあるので、初期治療が大切です。重症例においては、治療により水疱、びらんの出現が認められなくなるばかりでなく、ステロイド漸減後、少量のステロイドによる治療のみで寛解が維持されることが必要です。
一般的には、まずプレドニゾロンを開始し、その後減量を開始します。再燃傾向を認めた場合は、その時のステロイド投与量の 1.5~2 倍に増量するとともに、免疫抑制剤の補助療法を併用します。ステロイド増量のみでは減量の際、再燃する可能性が高いと言われています。
ステロイド内服が無効な場合や減量できない場合には、免疫抑制剤の併用療法を考えます。いずれの免疫抑制剤においても、肝臓、腎臓障害、骨髄抑制作用、感染症に注意します。血漿交換療法が可能である施設では、積極的に導入を考慮すべきであり、ステロイドの減量を速やかに行うことが可能です。また重症例においても即効性のある治療法です。
ステロイド内服などの通常の治療法に反応しない場合、γグロブリン大量静注療法により、ヒト免疫グロブリンを投与します。全般的な免疫抑制を伴わない唯一の治療法です。
外用療法として、水疱、びらんの湿潤面には抗生物質含有軟膏、ステロイド軟膏を塗布します。口腔内のびらん、潰瘍には口腔粘膜用ステロイド含有軟膏、噴霧剤などを使用します。

 

天疱瘡のよくある質問

Q.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

A.厚生労働省の衛生行政報告例の統計によれば、天疱瘡で特定医療費(指定難病)受給者証を交付されている患者さんは、日本全国で約3,500人(令和2年度)となっています。以前に比べて減少したのは、2015年に施行された難病法の医療費助成の要件に重症度分類が導入されたためと考えられます。世界での報告を見ると、年間発生率が100万人あたり1人から100人までと、人種および地域による差は大きいようです。南米やアフリカの一部には、落葉状天疱瘡を風土病として持つ地域があることも知られています。

Q.この病気はどのような人に多いのですか?

A.発病年齢は40〜60歳代に多く、また性別では女性にやや多い傾向があります。

Q.この病気の原因はわかっているのですか?

A.表皮または粘膜上皮の細胞どうしを接着させるデスモグレインというタンパクに対する自己抗体(自分自身を攻撃してしまうIgG抗体のこと)が病気を起こすことがわかっています。このような自己抗体が作られる詳しい原因は、まだわかっていません。

Q.この病気は遺伝するのですか?

A.遺伝することは、通常ありません。

Q.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

A.水疱・びらんが体にできている時期は、やわらかい素材でできた着脱しやすい衣服を着用するようにします。粘膜症状が強いときには、固い食べ物を避けて下さい。歯磨きの方法など口腔内のケアも重要で、必要に応じて歯科の先生と相談するのもよいでしょう。ステロイドを内服中の患者さんは、指示された量を忘れないように内服して下さい。急に内服を中止するとショック状態になったり、水疱が再発する危険性があるので、自己判断で内服を中止したり変更したりしてはいけません。ステロイドの副作用として、感染症を起こしやすい、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、胃潰瘍、高血圧などに注意が必要です。熱が出たり、体調不良がある場合は早めに受診するようにしましょう。症状が落ち着いてきたら、食べ過ぎに注意するとともに、散歩などの適度な運動を心がけましょう。

Q.天疱瘡の治療にステロイド内服は必要ですか?

A.天疱瘡の多くの患者さんにステロイド内服は治療として必要です。自己免疫疾患に対して自己免疫反応を制御する目的で、ステロイド(副腎皮質ホルモン、コルチコステロイド)内服が最も一般的に用いられている第一選択薬です。ステロイドは、副腎が出す人間にとって必須なホルモンで、抗炎症作用をもち、免疫反応を迅速に強力に抑える効果があります。現時点で、ステロイドの速効性、著効性を単剤で上回る薬剤は存在しません。ステロイドは、治療として用いる本来の作用以外に様々な作用を持つために、肥満、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、高脂血症などの副作用に注意する必要があります。

Q.テロイド内服療法以外の治療法はどのようなものがありますか?

A.初期治療において用いられるステロイド内服投与量は、重症、中等症には、プレドニゾロン1.0mg/kg/日(体重60kgの人は、1日に60mg)が標準的です。軽症においては、0.5mg/kg/日(体重60kgの人は、1日に30mg)で効果が認められることもあります。ステロイド単剤で治療効果が不十分な場合、あるいは、ステロイドの減量ができない場合に、免疫抑制剤を加えます。免疫抑制剤には、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミドなどがあります。
また、速効性の期待できる療法として大量γグロブリン療法、血漿交換療法、ステロイドパルス療法などがあります。これらの治療法をステロイド内服療法をうまく組み合わせて、病勢のコントロールを目指します。
重症であっても、適切な治療をすることにより、1年以内に8割以上の多くの患者さんが水疱、びらんを認めない寛解状態になります。初期に30-60mg/日で内服していたステロイドも徐々に減らしていくことができます。ステロイドは5-10mg/日の内服で寛解状態を保てるように治療を継続します。

Q.天疱瘡を治療するのに入院は必要でしょうか?

A.重症、中等症の天疱瘡の患者さんの治療を行う場合は入院が必要です。ステロイド内服、免疫抑制剤の内服等の治療開始初期におこる万が一の副作用に関して、迅速に対応する事ができます。全身状態の変化、結核、肝炎ウイルスなどの感染症の合併、胃潰瘍、高血圧、糖尿病の合併の有無など、外来診療では対応できない統合的なケアが入院により可能になります。入院するにはそれぞれの日常を持っている多くの患者さんにとって大変な負担となりますが、病気と向き合い、きちんと治療をして、早く通常の生活に戻るための有効な手段でもあります。

Q.天疱瘡の抗体価はどのような意味がありますか?

A.落葉状天疱瘡に対する抗デスモグレイン1抗体と、尋常性天疱瘡に対する抗デスモグレイン3抗体は、保険診療において測定することが可能です。これらの抗体の有無は、診断に有用ですが、その抗体価(抗体の量)はその後の病勢の評価にも有用です。水疱、びらんがある治療初期は、水疱、びらんの範囲が治療の効果を示す指標となります。治療が成功して、水疱、びらんが消えてしまったあとは、抗体価がステロイド減量のスケジュールを考える上でもよい指標となります。抗体価が減少してくれば、天疱瘡の原因となる自己抗体が減少していることになり、安心してステロイドを減量することができます。デスモグレイン抗体価は、それぞれの患者さんの経過に平行して推移する傾向があります。しかし、異なった患者さんの間で、Aさんの抗体価がBさんより高いからといって、からなずしもAさんがBさんより重症であるわけではありません。

Q.天疱瘡は他人にうつりますか?

A.天疱瘡は、感染症のように他人にうつることはありません。天疱瘡の患者さんを看病することにより、自分が天疱瘡になることはありません。

Q.天疱瘡と類天疱瘡は違う病気ですか?

A.天疱瘡と類天疱瘡はともに水疱、びらんができる自己免疫性疾患ですが、異なる病気です。類天疱瘡は、皮膚の中で、表皮と真皮の間にある基底膜の蛋白に対するIgG自己抗体が原因で起こります。高齢の方に発症する傾向があります。基本的な治療法は同じですが、薬剤の量など症例により異なりますので、正しく診断を受けることが大切です。天疱瘡はQ15の特定疾患に認定されていますが、類天疱瘡は認定されていません。

 

 

皮膚科の疾患

 

当院で掲載している疾患に関する説明は、患者さん並びにご家族の皆様に参考となる情報提供であり、全ての疾患の検査や治療を行えるわけではありません。

病名・部位・キーワードから病気を調べる(ヘルスケアプラットフォーム:Medicalnote)

関連記事

最近の記事 おすすめ記事
  1. 登録されている記事はございません。
  1. 無汗症

  2. 心臓弁膜症

  3. 虫歯の治療

カテゴリー

アーカイブ

検索

TOP
TOP